「FP2級 裏ワザ」 今、検索窓にそう打ち込んでこの記事にたどり着いたあなたは、もしかすると試験直前で焦っていたり、膨大な勉強量に圧倒されて「近道」を探しているのかもしれません。
最初に結論を申し上げます。マークシートの塗り方だけで受かるような、オカルトめいた裏ワザはこの世に存在しません。
しかし、「合格する人が当たり前にやっていて、落ちる人がやっていない『思考のショートカット』」は確実に存在します。これを多くの人は「裏ワザ」と呼びますが、その正体は「徹底的な合理化(=捨てる技術)」です。
私は現在、FPとして実務を行っていますが、資格試験において「満点」ほど無駄でコストパフォーマンスの悪いものはないと考えています。
今回は、独学やリベンジ受験の方が陥りやすい「真面目すぎる勉強」をやめ、最短距離で合格ラインを超えるための5つのテクニック(裏ワザ)を解説します。
なぜFP2級にだけ「裏ワザ」が必要とされるのか
FP3級のときは、テキストを最初から最後まで読めばなんとかなったはずです。しかし、2級になると急に「裏ワザ」や「効率化」が検索されるようになります。 理由は単純で、「真面目に全範囲を網羅しようとすると、物理的に時間が足りなくなるから」です。
FP2級は3級に出題範囲(6分野)こそ同じですが、「深さ」と「処理量」が格段に増えます。特に実技試験では、知識があるだけでは解けない複雑な計算問題が出現します。
ここで不合格になる人の典型パターンは、テキストの1ページ目(ライフプランニング)から最後のページ(相続)までを、均等な熱量で完璧に覚えようとする「優等生タイプ」です。
一方、合格者は違います。彼らは「どこで手を抜くか」を試験開始前から決めています。この「手の抜き方」こそが、これから紹介する裏ワザの正体です。
裏ワザ①:FP2級は「満点を狙わない」と決める
最大の裏ワザは、メンタルセット(考え方)の変更です。 FP2級の合格ラインを知っていますか? 「6割(60点)」です。 裏を返せば、「4割は間違えても、国はあなたを合格させる」ということです。
合格者は、試験中に難問や奇問(見たこともない用語)に出会った時、反射的にこう考えます。 「あ、これは捨て問(4割側)だな。パス。」
一方、不合格になる人はこう考えます。 「勉強したはずなのに分からない。思い出さないと……(焦り)」
この思考の差が、合否を残酷なまでに分けます。 「6割取れればいい」という受け身の姿勢ではなく、「積極的に4割を捨てに行く」という攻撃的な割り切りを持ってください。これを持つだけで、学習すべき優先順位が劇的にクリアになります。
裏ワザ②:計算問題は「解く前」に切る(トリアージ)
FP2級、特に「実技試験」において、最大の敵は時間です。 ここで使える裏ワザが、医療現場で使われる「トリアージ(選別)」の考え方です。
試験問題には以下の3種類しかありません。
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即答できる知識問題(ボーナスステージ)
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時間はかかるが解ける計算問題(勝負どころ)
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解法がパッと浮かばない複雑な問題(地雷)
真面目な人は「3」に時間を使い、計算ミスをして自滅します。 裏ワザ的な攻略法は、「問題を見た瞬間に、解くか解かないかを決める」ことです。
例えば、係数表を使った単純な将来価値の算出なら「即やる」。 逆に、特例要件が複雑に絡み合う建ぺい率・容積率の計算で、少しでも迷ったら「後回し(または捨てる)」。
この「解かない勇気」を持つことが、結果として全体の得点率を押し上げます。試験開始の合図とともに、まずはペンを置き、全体をパラパラとめくって「捨て問」にバツ印をつける作業から始めるのも、非常に有効なテクニックです。
裏ワザ③:過去問は「正解するため」に解かない
「過去問道場」などのアプリを回す際、正解して「やったー!」と喜んでいませんか? 厳しい言い方ですが、それは時間の無駄です。
効率的な裏ワザは、「誤りの選択肢が、なぜ誤りなのか」を瞬時に言えるようにすることです。
FP試験は基本的に4択(または3択)です。 正解の肢(あし)を一つ選ぶ能力よりも、「明らかに違う肢を2つ消去し、勝率を50%まで高める能力」の方が、本番では圧倒的に役に立ちます。
過去問演習では、正解することよりも「選択肢の切り方(間違い探し)」の精度を上げてください。 「数字が違う」「要件が逆」「”必ず”という言葉があるから怪しい」など、出題者が仕掛ける「ひっかけのパターン」を覚えること。これが、初見の問題に対応するための唯一の方法です。
裏ワザ④:6科目を「平等」に扱わない(凸凹戦略)
ライフ、リスク、金融、タックス、不動産、相続。 この6科目を「平均的に」勉強しようとしていませんか? それはやめましょう。
FP試験には、「努力が得点に直結しやすい科目」と「泥沼化しやすい科目」があります。
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得点源にすべき科目(裏ワザ推奨):
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ライフ・タックス:問題パターンが決まっており、法改正さえ押さえれば満点が狙いやすい。
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守りに徹する科目:
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金融資産運用:経済情勢で難易度がブレやすく、プロでも迷う難問が出やすい。
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不動産:範囲が膨大で、深入りすると沼にはまる。
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私のおすすめは、自分の得意分野(例えば不動産やタックス)で9割を狙い、苦手分野(金融など)は「頻出のAランク問題」だけ抑えて5割を目指すという「凸凹(デコボコ)戦略」です。
トータルで6割を超えれば合格です。苦手科目の克服に時間を使いすぎて、得意科目の復習がおろそかになる「本末転倒」を防ぎましょう。
裏ワザ⑤:試験直前1週間に「やってはいけないこと」
最後の裏ワザは「やらないことリスト」です。 試験直前(1週間前〜当日)に以下の行動を取ると、合格率が下がります。
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新しいテキスト・予想問題集を買う
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不安になって手を広げると、知識が混乱します。ボロボロになった1冊のテキストと心中してください。
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綺麗な「まとめノート」を作り始める
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ノート作りは「作業」であり「勉強」ではありません。自己満足で終わります。テキストに直接書き込む方が100倍効率的です。
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SNSで「他人の勉強時間」を検索する
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「〇〇時間で受かりました!」という投稿を見ても、あなたの点数は1点も上がりません。メンタルが削られるだけです。
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直前期は、新しい情報を入れるのではなく、「すでに覚えた知識が抜け落ちないように蓋をする」期間だと割り切ってください。
まとめ:裏ワザの正体は「割り切り」である
FP2級における「裏ワザ」とは、決してズルではありません。 膨大な試験範囲の中から、「合格に必要な6割」だけを冷徹に選び取り、それ以外を捨てる「割り切り」の技術です。
このマインドセットは、FPの資格を取った後の実務でも役立ちます。 お客様の相談に対して、全ての法律知識をひけらかすのではなく、「その人にとって必要な解決策だけを提示する」。これができるのがプロのFPだからです。
まずは「満点合格」という無駄なプライドを捨ててください。 肩の力を抜いて「6割取れれば勝ち」と開き直ること。それが、最短合格への一番の近道であり、最強の裏ワザです。

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