前回と前々回、FP3級、FP2級の合格率分析をやった時に、FP協会と比較して、きんざい(金財/金融財政事情研究会)のFPの合格率の低さが気になってしまいました。
どういう傾向なのか、FP協会の試験やきんざいの受験者の傾向、試験結果をみながら、筆者なりに合格率が低い理由を2つ挙げてみます。
きんざいとは
一般社団法人金融財政事情研究会(きんゆうざいせいじじょうけんきゅうかい)の略で「きんざい」(金財)ということですが、筆者はひらがなで一貫して「きんざい」と言っています。
現在は一般社団法人ですが、これまでは財務省及び文部科学省共管の社団法人とのことでした。
しかしながら、公益法人制度改革により、2011年4月1日~一般社団法人に移行している団体です。
FP3級、FP2級試験(FP技能検定)以外にも、金融窓口サービス技能検定や、DCプランナー等の検定試験や、定期刊行物、金融経済・法務、金融機関経営に関する実務書の刊行、その他知識の啓蒙などをやっている法人です。
会長はじめ、理事や監事には元金融機関役員クラスや元官僚などが名を連ねていることから、これらのいわば天下り先のひとつの様な形にみえます。
元政府系の社団法人となると、確かにそのような位置づけにあるのは分かる気がします。
きんざいのFP合格率が低い理由
上記のデータを見て来たうえで、もう少しFP合格率について考えてみます。
おもに「受験生の質の違い」と「記念受験組」の2つが挙げられそうです。
受験生の質の違い
FP協会経由で受験される方は、FP3級合格後のFP2級の受験とともに、AFP認証取得を狙われる方も一定程度いるのではと考えられます。すなわち、FP協会は
・FP協会のFP啓蒙が充実している
・AFP・CFP®の場合にはマイページが設けられコンテンツが充実している
などが挙げられそうです。
きんざいについては、金融系企業の受験推奨または強制的な受験により、団体申し込みを行うことで、当日会場に行かなかったり、勉強が主体的でなかったりもあるかもしれません。
記念受験組の多さ
ここはFP協会ときんざいの受験合格率の差が全てを物語っていると考えられます。
同様の試験でこれだけ合格率に差が出るということは、受験者の中で十分に勉強してこなかった層や、仕方なしに会場に来た層も考えられそうです。
これは結構時間とお金が勿体なくって、やるならしっかりとやった方があとあとのキャリアにとってプラスになるのに…と思います。
難易度については、FP3級、FP2級でさほど変わる事はないでしょう。
同時期に2つ受けることは出来ないので、比較は当然できませんが、学科は同じ問題を使用しているとのことです。
実技は項目が違うため、内容は当然違いますが、資格の価値が同じということで、難易度が違うということはありません。
仮に難易度が違ったら、片方に殺到することになりますし、当然各受験機関からはそのような公表はあり得ないため、同様でしょう。
きんざい受験者の傾向
きんざい受験者にはある特色が見られ、その為、合格率が比較的低い傾向にあります。
きんざいのデータが見つからなかったので、FP協会のデータと比較しながら考えてみます。
FP協会経由の受験者との比較
FP協会と、きんざいの申込者数や、受検者数、試験結果について、2022年5月開催の例をもとに、検証してみます。
FP協会の傾向
まずはFP協会から、2022年5月のFP3級の試験結果です。
※日本FP協会 2022年5月実施3級FP技能検定試験結果より 参照ページ
きんざいの傾向
きんざいについても同様にFP3級の試験結果を見てみます。
※金融財政事情研究会 試験結果:2022年5月試験より 参照ページ
きんざいとFP協会の傾向比較
きんざいの数値の並びは、FP協会と同じです。ここから、以下の様な理由が考えられます。
申込者数(A) | 受験者数(B) | 合格者数(C) |
受験率%(B/A) |
受験合格率(C/B) |
申込合格率%(C/A) |
|
FP学科 | 48,518 | 39,231 | 32,707 | 80.86 | 83.37 | 67.41 |
FP実技 | 48,264 | 38,810 | 35,058 | 80.41 | 90.33 | 72.64 |
きんざい |
27,002 | 19,407 | 9,517 | 71.87 | 49.04 | 35.25 |
きんざい 実技個人 |
10,414 | 8,871 | 5,522 | 85.18 | 62.25 | 53.02 |
きんざい 実技保険 |
19,709 | 13,494 | 6,159 | 68.47 | 45.64 | 31.25 |
FP協会経由では学科、実技共に申し込んだ方の8割が受験に行くものの、きんざい学科は7割程度、実技の個人は8割5分、保険に至っては7割弱ほどになります。
実際には、
・きんざい実技は、個人(資産相談業務)受験の方は学科とともに会場へ
・保険(顧客資産相談業務)の方は、申し込むだけ申し込んで、試験会場に行かない人もいる
金融系企業に所属かそれ以外か
こちらはFP協会のデータになりかつCFP®とAFP保有者のため、FP3級、FP2級とはずれますが、ほぼ近しいものでしょう。
金融以外の方も比較的受験されています。
※日本FP協会 データで見るFP資格より 参照ページ
きんざいはFP協会で言う不動産・住宅よりも左上は比較的少なく、右半分の金融系企業が大半を占めるのではと想定されます。
まとめ
FP協会受験生のデータも交えながら、きんざいの傾向について筆者なりに見てみました。
FP協会受験生は協会側の啓蒙やコンテンツ、さらに今後のスキルアップが明確化していて、自己投資している意識の高い方が比較的臨まれる傾向にありそうです。
一方のきんざい受験生は金融機関系の方が多く、会社の要請での取得、また自らでスキルアップを図っていく傾向にあるのではないでしょうか。
どちら経由で受験するにしても、同一のFP3級、FP2級資格なので、しっかり準備をして合格という栄冠を勝ち取って欲しいと願っています。
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