FP2級の勉強を始めてしばらくすると、多くの人が一度はふとテキストを閉じ、天井を見上げてこう感じます。
「これ、自分に向いていないかも」
3級のときは「なんとかなりそう」と思えたのに、2級になった途端、景色が変わります。 計算問題が思ったより複雑で、数字を見るだけで頭が痛くなる。 覚える範囲が広すぎて、昨日やったことを今日忘れている。 過去問を解いても、解説の意味すら分からない時がある。
もしあなたが今、そのような状態にあるなら、まずお伝えしたいことがあります。 それは、あなたが「能力不足」なのではなく、単にFP2級という試験の性質と、今のあなたの考え方がうまく噛み合っていないだけ、というケースがほとんどです。
この記事では、「FP2級に向いていない人」を単純に切り捨てるのではなく、なぜそう感じてしまうのか、その原因を整理します。 そのうえで、「それでも合格したい」と思うなら、どう考え方を切り替えればいいのか。あるいは「やめる」という選択肢をどう捉えるべきか。 綺麗事抜きで、現実的な話をします。
「向いていない」と感じやすい人の共通点
まず、あなたが「向いていない」と感じている理由を整理してみましょう。多くの場合、理由はそれほど複雑ではありません。
数字や計算が出てきた瞬間に手が止まってしまう。 テキストは読めるのに、問題になると全く解けない。 あるいは、そもそも勉強時間が取れず、自己嫌悪だけが積み重なっていく。
実は私自身も、FP3級に合格した直後は似たような感覚に陥りました。 特に「相続」や「事業承継」といったテーマが、当時の自分の生活には全く現実味を帯びておらず、「この勉強を続けて、本当に自分に向いているのだろうか」と足が止まってしまったのです。 試験範囲としては理解できても、生活の中で使うイメージが湧かない分、余計に不安になったのを覚えています。
勉強が手につかなくなったときや、「このまま続けて大丈夫なのか」と感じたときの考え方については、以下の記事でも整理しています。
ですから、もしこれらに心当たりがあっても、安心してください。 これは「才能がない」のではありません。FP2級という試験の「独特のクセ」に、まだ慣れていないだけです。
FP2級は「得意・不得意」が露骨に出る試験
FP2級は、努力量よりも先に「相性の悪さ」が見えてしまう残酷な試験でもあります。
例えば、普段から数字を扱う仕事をしている人や、論理的なパズルが好きな人は、あまり勉強しなくても計算問題が解けてしまいます。彼らにとってFPの計算は「パズル」であり、苦痛ではありません。 一方で、感性や情緒を大切にするタイプの人にとって、FPの「無機質な数字の羅列」は苦行でしかありません。
逆に、得意分野があっても迷う人は迷います。 私の場合、金融分野自体は決して苦手ではありませんでした。ただ、学習を進めるうちに、実務ではほとんど使わないであろう理論や細かい計算まで深く掘り下げる必要があり、「ここまでやって2級を受ける意味があるのか」と立ち止まったことがあります。
ここで重要なのは、「向いていない=落ちる」ではないという点です。 「向いていない」ということは、「合格までのルートが他人とは違う」というだけの話です。得意な人が一直線に進めるなら、あなたは遠回りになるだけです。進み方さえ間違えなければ、合格には辿り着けます。
向いていない人ほどやりがちな「勉強のズレ」
「自分は向いていない」と悩む人の勉強法を見ると、驚くほど共通した「ズレ」があります。 それは、「真面目すぎる」ということです。
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テキストを最初から完璧に理解しようとする 分からない用語があっても止まらずに進めばいいのに、一度立ち止まって悩み込んでしまう。
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計算問題を「数学的」に理解しようとする 「なぜこの公式になるのか?」という背景を知ろうとする。FP試験では「使いこなせればOK」なのに、理屈を求めてしまう。
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苦手分野を最後まで引きずる 6科目全てで平均点を取ろうとする。「金融だけは捨てて、他でカバーする」という割り切りができない。
これらは、本来素晴らしい資質です。実務家としては、むしろ必要な誠実さかもしれません。 しかし、「試験に受かる」という一点においては、この真面目さが足かせになります。 結果的に点数が伸びず、「やっぱり向いていないんだ」と自信を喪失してしまうのです。
真面目な人ほど点が伸びない原因は、「過去問の使い方」にあるケースも少なくありません。 具体的なズレについては、以下の記事で詳しく解説しています。
それでも受けるなら、考え方を変える必要がある
もし、あなたが「向いていないかもしれない」と感じつつも、「それでも合格したい」と願うなら、思考のOSを入れ替える必要があります。
FP2級は、「お金の知識を深く理解する試験」ではありません。 「6割の点数を、パズルのように積み上げる試験」です。
向いていないと感じている人が、実際に点を取るためには、次の考え方が必要になります。
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「分からない」を許容する テキストを読んでいて分からない箇所があっても、「ふーん、そういうものか」と流す勇気を持つこと。理解できなくても、マークシートは塗れます。
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計算問題は「型」で覚える 意味を理解しようとせず、スポーツの素振りのように「この数字が来たら、ここに当てはめる」と機械的に処理する。感情を入れないことがコツです。
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合格点(60点)以上は狙わない 苦手な分野(例えば金融資産運用)は、最初から「半分取れれば御の字」と決めておく。その分、得意なライフプランニングやタックスで稼ぐ。
向いていないと感じる人ほど、この「割り切り」ができるようになった瞬間、急に点数が伸び始めます。 「理解すること」を諦め、「点数を取ること」に特化する。この切り替えこそが、合格への唯一の近道です。
ここで言う「割り切り」は、精神論ではありません。 実際の試験では、「どこを捨て、どこで点を拾うか」を事前に決めておくことが、合否を分けます。 具体的な考え方や、実際に多くの受験者が使っている「捨て方」については、以下の記事で詳しく整理しています。
それでも「無理だ」と感じるなら、やめる判断も正解
ここまで読んでも、「やっぱり辛い」「吐き気がするほど嫌だ」と感じるなら。 「今回はやめる」という判断も、立派な正解です。
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FP3級で止める: 一般的な教養としては3級で十分です。無理に2級を取らなくても、生活には困りません。
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実務経験を積んでから再挑戦: 将来、家を買ったり、保険を見直したりするタイミングが来れば、内容は自然と頭に入ってきます。その時にまた受ければいいのです。
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別の資格に切り替える: 宅建や簿記など、相性の良い資格は他にもあります。FPに固執する必要はありません。
撤退は「敗北」ではありません。 あなたの大切な時間と労力を、もっと自分が輝ける場所に再投資するための「戦略的撤退」です。
まとめ
FP2級に向いていないと感じる人は、決して少数派ではありません。むしろ、多くの合格者が一度は「もう嫌だ」と思いながら、なんとか食らいついて合格を手にしています。
ただ、その苦しみの原因が「真面目すぎる勉強法」にあるなら、やり方を変えるだけで景色は変わります。 向いていないと感じる理由を整理せず、ただ我慢して勉強を続けるのは地獄です。
それでも受けるなら、完璧を目指さず、合格点だけを見て進んでください。 「理解」は後からついてきます。まずは「合格」という結果だけを淡々と狙う。 その割り切りができるなら、向いていないと感じている今のあなたでも、FP2級は十分に手が届く場所にあります。
続けるか、やめるかを判断するために、必要な学習量を一度整理しておきたい方は、こちらも参考にしてください。





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