先日、筆者の知り合いの方(40代半ば)が失業してしまいました。
その後、就職活動をした結果、就職先を見つけることができましたが、その一連の手続きについてFPとしてアドバイスしました。
今回はFP試験にも絡んでくる事例もありますので、CFP®・FP1級である筆者がトピックスとして紹介します。
今回、失業から就職までのすべての流れについて記載しますので、目次より飛んでいただき、FP試験にも関係する興味深い所を中心にご確認頂ければ幸いです。
失業した場合にはどういう手続きが必要なのか?
FP試験にも頻出ででてくる、失業した場合の手続きがこの際には活きてきます。
どのような手続きが必要なのか、改めて見てみます。
失業の要因はどのようなものか
まず、失業の要因となる、所属先を退職したところから確認となります。
会社側から、退職証明書が発行されるかと思います。
発行されない場合は、発行を依頼する必要があるでしょう。
そこに、どのような事情で退職したのかが記載されています。
例えば、退職の理由が自己都合ではないのに、「自己都合」と記載やチェックがされていないかどうかは必ず確認しておく必要があります。
後述の基本手当でも記載しますが、「自己都合」と「会社都合」による退職は、退職手続きの際に大きく違ってくるので、必ず確認しておく箇所と言えるでしょう。
「自己都合」と「会社都合」(特定受給資格者)の定義についても十分に事前に確認しておくことで、自身の認識の違いが無いように注意する必要があります。
社会保険料関係の手続き
次に、退職が決まったら、必ず確認しておきたいのが、退職後にどのような社会保険に加入するかという点です。
退職日翌日から、これまで保有していた健康保険証が使えなくなります。
筆者も勤務先にて労務をやることがありますが、その際に良く出て来るのが「継続して健康保険証は使えるのでしょうか?」という点です。
健康保険証は、退職日翌日には退職する会社に戻さなければならないため、継続して使うことができません。
そのため、FP試験で良く出て来る、健康保険の「任意継続」を行うか、それとも国民健康保険に切り替えるか、という点です。
任意継続への切り替え
任意継続は、前職で2か月以上の被保険期間がある方が、退職日から20日以内に手続きをする必要があります。
それにより、これまで加入していた健康保険組合に、引き続き最大2年まで継続することが可能というものです。
2-2-2、ということで、「任意継続被保険者、2か月、ハツカネズミ、2年」という語呂合わせが、おーちゃん先生の講座で良く出て来ると思いますが、まさにあれです。
ただ、任意継続期間は、これまでの会社との折半が無くなるため、これまでの倍額を支払わなければならないこととなります。
国民健康保険への切り替え
一方で、都道府県や市町村の自治体に手続きを行うのが、国民健康保険です。
比較的高額給与の方の場合は、任意継続の方がメリットがあると言われていますが、自営業やフリーランスに変更するなど、国民健康保険を継続しなければならない場合は、2年目以降に国民健康保険でもメリットが出てくる可能性があるようです。
国民年金への切り替え
こちらもFP試験での問題で頻出ですが、会社員や公務員である場合は、公的年金の第2号被保険者で、厚生年金でした。
退職した場合は、自営業や学生などと同様の、第1号被保険者で国民年金に加入することとなります。
その場合は、退職から2週間以内の手続きが必要です。
自治体の役所に行くと、国民健康保険の手続きの際に、流れで国民年金への切り替え手続きができるところもあるので、そのまま手続きすることが多いでしょう。
ちなみに令和4年度の国民年金保険料は、月額16,590円と決まっていますが、毎年金額は変わってきます。
ハローワークでの手続き
続いて、退職後、その間失業する場合は、ハローワークでの手続きが必要となります。
次が決まっていて就職先を探さなくてもいい場合は、その限りではないですが、一般的に暫く失業状態となる場合は、ハローワークで手続きすることとなるでしょう。
雇用保険の基本手当の条件
失業した場合には、雇用保険から基本手当が支給されます。
ここもFP試験での頻出箇所ではありますが、原則として、離職日前の2年間に雇用保険期間が12か月以上あることが条件とされています。
ただし、会社都合退職の場合は、離職日以前の1年間に雇用保険期間が6か月以上あることが条件です。
会社都合退職の場合における基本手当の所定給付日数
いわゆる、特定理由離職者に該当する項目です。
こちらもFP2級などのテキストには必ず掲載されていますが、基本手当の給付日数は、年齢や被保険者の期間によってそれぞれ違ってきます。
※ハローワーク ホームページ「基本手当の所定給付日数」より抜粋
最大は45歳以上60歳未満の方の、被保険者期間が20年以上の場合の330日までとなっています。
次に挙げる自己都合退職の場合と条件にかなり違いがあります。
会社都合退職は、自分が本来退職したくなかったのに、せざるを得ない事情によるものです。
長く働いている方ほど、基本手当の給付期間も長くなります。
筆者のお知り合いの方は、会社都合退職で40代半ば、20年以上の被保険者期間があることもあり、330日の最長の条件をクリアされていました。
自己都合退職の場合における基本手当の所定給付日数
同じく自己都合退職の場合です。
※ハローワーク ホームページ「基本手当の所定給付日数」より抜粋
テーブルは一つで、年齢による区分はなく、被保険者期間のみの区分です。
会社都合退職の約半分しか受給できない条件となり、さらに次に記載する失業の認定についても会社都合に比べて制約があります。
失業の認定と給付制限期間
退職日以降、数日かかることもありますが、離職票とともに、雇用保険被保険者証が発行されますので、それを持ってハローワークに急ぐことになります。
なぜなら、基本手当の受給開始が後ろ倒しになり、基本手当の入金もずれていくためです。
書類を受け取ったらできるだけ速やかにハローワークにいきます。
ハローワークに行って初回手続きした日が受給資格決定日と言われる日になりますが、その手続きの日を含めた7日間が失業しているかを判断する待期期間となります。
※東京労働局職業安定部 離職された皆様へのパンフレットより抜粋
会社都合と自己都合の例が挙げられていますが、会社都合の場合は待機満了日から支給対象期間のカウントが開始します。
一方で、自己都合の場合は、待機満了日から支給対象期間のカウント開始まで、「給付制限期間」があり、これが2か月間あります。
※令和2年10月1日以降、離職日から5年間に2回までの離職の場合は、給付制限期間が2か月と短縮されます
そのため、自己都合退職の場合は、基本手当給付が遅くなる点に注意する必要があります。
基本手当の日額
雇用保険の基本手当の日額は、離職した日の直前の6か月に毎月支払われた賃金(賞与除く)の合計を180で割って算出した金額の約50~80%(60歳~64歳については45~80%)となります。
上限額は以下の通りです。
※ハローワーク ホームページ「基本手当」より抜粋
仮に、事例を2つ挙げますと、
・40×6か月÷180=13,333円>8,355円
・日額8,355円×28=233,940円
・20×6か月÷180=6,666円<7,595円
・日額6,666円×28=186,648円
と算出されます。
もちろん、所得ではないため、ここから税金や社会保険料が引かれることはありません。
定期的な失業認定のための報告
最初にハローワークで手続きをした受給資格決定日以降、4週間に一度、定期的にハローワークで失業認定を受けることとなります。
この4週間に一度、定期的にハローワークに行くことが離職した場合のサイクルとなり、必ず4週間後に行かなければなりません。
また、次回に行く日までの間に、2回以上の求職活動をしたことも失業認定申告書を通じて報告が必要となります。
すなわち、就職(求職)活動をしていて、なお次の職が決まらないことを前提として、基本手当の支給となります。
報告をしてから数日程度で基本手当が所定の口座に振り込まれることとなります。
また、求職活動は具体的に何をすることになるかというと、ハローワークでの職業相談や、実際に職業紹介を受けた、エージェントを通じて応募をした、面接をした、などが4週間の間で2回以上必要ということになります。
就職活動については次項で詳細について触れます。
就職活動
さきほど、認定日の間の4週の間に就職活動を2回以上しなければならないという決まりがあると紹介しました。
就職活動は、ハローワークでもエージェント経由でも、どのような形でも良いようです。
エージェントや求職サイトを通じて個別で実施する
筆者の知り合いはこちらの方で行っていましたが、通常の転職活動で行うような、エージェントに企業を紹介して貰ったり、求人サイトに登録して応募することでも問題ありませんでした。
ハローワーク経由での紹介となると、これまでの業務との親和性や条件面での乖離等があり、中々希望に合う職種にありつけない可能性も考えられるでしょう。
その場合は、こちらの方が良いと考えられます。
ハローワーク経由で紹介をしてもらう
そもそもハローワークとしては、失業した方に対して、早く職についてもらいたいということで、積極的に職を紹介してくれますし、相談にも乗ってくれます。
また、いわゆる雇用のミスマッチにより、求人倍率が非常に高い企業の案件も数多く保有しています。
そのため、失業認定申告書には、「自分に適した仕事が紹介されたらすぐに応じられるか?」という項目があり、求めている職業も多いということとなります。
一方で、人気の事務系は買い手市場であり、ハローワークが取り扱っている求人の中では、求人倍率が1倍を大きく割り込んでいることも考えられます。
失業期間中の労働
失業期間中であっても、労働を行うことはNGではありません。
日々の生活の不安があるため、稼ぐことは認められています。
ただし、基本手当を受給している関係上、業務を行った場合は、以下の2パターンの申告をしなければなりません。
・4時間未満の労働の場合は、内職または手伝いの扱いとされ収入額の記載が必要となる
4時間以上の場合は、受給対象日から外れ、その日分が伸びることとなります。
すなわち、28日後の次の失業認定申請までに、2日労働した場合には、基本手当は26日分支給され、2日分は後送りされます。
2日が後送りされますが、消えないので、働く際はしっかりと稼ぐことがいいと考えられます。
知人から、労働していいのかという点も相談されたので、念のためにハローワークに確認をしましたが、日額や時給額は特に問わないとのことでした。
極論すれば、失業中であっても日額が10万円でも、時給が1万円でも業務をすることには問題ないとのことです。
就職が決まった場合の手続き
無事就職が決まった場合には、速やかに手続きが必要となります。
具体的にはどのような手続きが必要になるのか紹介します。
再就職手当支給の条件
手続きの紹介に入る前に、再就職手当について確認しておきます。
再就職手当とは、無事就職が決まった場合に、ハロワークから受領できる就職お祝い金のようなものです。
次への就職が早く決まれば決まるほど、受給額も多くなりますが、受領するには以下の条件を全てクリアしている必要があります。
②就職日の前日までの失業認定を受け、基本手当の支給残日数が、所定給付日数の3分の1以上ある
③離職前の事業主に再び雇用されたものでない(資本・資金・人事・取引等の状況から、離職前の事業主と密接な関係ある事業主と関わりない)
④自己都合退職で原則2ヶ月の給付制限がある場合、1ヶ月目はハローワークもしくは人材紹介会社の紹介での就職
⑤1年を超えて勤務する見込みがある(ただし、1年間の契約社員で更新がない場合は対象外)
⑥原則、雇用保険の被保険者となっている
⑦就職日前3年以内の就職について、再就職手当または常用就職支度手当の支給を受けていない
⑧受給資格決定(求職申し込み)前から採用が内定していた事業主に雇用されたものではない
その場合において、再就職手当が支給されます。
再就職手当の額
再就職手当の支給は、以下の様な条件で支給額が算出されます。
・所定給付日数の3分の2以上の支給日数を残して就職した場合、支給残日数の70%を基本手当日額に乗じて得た額を支給
また、再就職手当の額は以下の通りです。
前述した基本日額同様に、こちらも例を挙げますと、再就職手当の額の式から、
と算出されます。
このように、所定給付日数のうち、残日数が多い場合は再就職手当の額も多くなることとなり、ハローワークとしては、早い段階で再就職された方には厚く手当を支給することが分かります。
再就職手当の申請
再就職手当の申請には、再就職手当の支給申請書とともに、新たに就職する予定の会社との雇用契約書や、派遣就業証明書など、職に就くことが明らかになる書類を準備して申請することとなります。
次に記載する就職日前日に、基本手当支給を終了する手続きとともに、再就職手当の申請をすることとなるでしょう。
就職日前日の失業認定手続き
また、再就職手当の申請とともに、就職日前日には、前回の失業認定から就職日前日までの失業期間の認定を行います。
これが就職前の最後の認定となり、その期間の基本手当が受給できることとなります。
つらくて中々決まらないこともあった就職活動ですが、この段階で基本手当の受給も最後になり、晴れて明日からは新たな職場で働くこととなります。
自営業の場合
自営業の場合も就職の扱いとされ、就職と同様の手続きを経ることとなります。
特に就職と違うのは、雇用される訳ではなく、自分自身で起業したりフリーランスとして働くこととなるため、そのための証明を提出して手続きを行うこととなります。
開業届の提出
再就職手当支給の条件①に「事業を開始している」との記載がありました。
そのため、開業する場合も再就職手当の受給が可能となります。
ただしその場合は、開業届の提出が求められることもあるようです。
しかしながら、最近では会社においては副業や兼業を認めているところも多いため、雇用されながらも自分自身で開業届を提出して副業を行っているパターンも考えられます。
再就職手当が受給できるかは、金額的には見逃せないため十分に確認する必要があるでしょう。
フリーランスの場合は業務委託契約書や請求書の控えの提出
フリーランスの場合は、業務委託契約書を通じて、継続的に業務が受注できるかが就職の代わりとしての判断となります。
就職と同様に、1年を超えて業務をする見込みがあるかの確認がなされるため、契約書にその旨が記載されているかどうかの確認もなされることとなるでしょう。
さらに、実際に業務を開始した場合には、期日に発注先に対する請求書を発行することとなりますが、その発注書の控え等、なんらかの業務を行った証明資料の提出も必要となるでしょう。
まとめ
ご相談された方が決まって良かったと思っています。
40代半ばという年齢ならご家庭をお持ちである方も多く、収入が途絶えるとなると、眠れないほど心配も尽きない事でしょう。
会社都合であり受給条件が比較的揃っていたことに加え、次が決まったこともあり晴れ晴れとされていました。
できれば失業という状態には出会いたくないものですが、会社はいつどうなるか分からない不透明な所もあります。
FP試験合格を目指されている方や既にFPの方、またそれ以外の方においても、「もし自分がこうなったら…」「もし相談者がこのような状態になったら…」の「もしも」はあり得るかもしれないので、試験に頻繁に出て来ることもあり、紹介しました。
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